進学先国を決定するのは、留学費用や学費・留学期間を考える上で非常に大切です。
というのも進学先の国によって留学費用や学費、留学期間は大きく変わります。進学先を大まかに決めておくことで大学院を効果的に選ぶことができます。
僕は学費の点から「奨学金が取れたらアメリカに留学、取れなかったらアメリカの博士課程もしくはヨーロッパの修士課程」と決めました。
主な進学先
海外の大学院に進学しようと考えたときに、進学先を大きく分類すると以下の3つになります。
- アメリカ留学
- イギリス留学
- ヨーロッパ留学
それぞれの進学先にはいい点も悪い点もあるので、各国に進学した場合どのような特徴があるのかについてこれからまとめていきます。
各国のメリット・デメリットを理解したうえで留学先の国を決定するようにしてください。
アメリカ留学
アメリカの大学院へ進学した場合、留学期間は以下のようになります。
- 修士課程の留学期間は通常2 年
- 博士課程の留学期間は通常4〜8 年
アメリカの大学院は様々な国の学生が集まる非常に国際的な大学が多いです。
アメリカの大きな特徴は一流の環境と高額な学費です。
一流の研究環境
世界大学ランキングを見てもわかるように世界でトップの大学のほとんどがアメリカの大学です。
世界中から優秀な研究者がアメリカに集まり、研究を行っているためアメリカの大学に進学すると一流の研究環境の中、勉強することができます。
アメリカでは一般的に競争社会なので、世界中から集まった優秀な研究者と協力しつつも切磋琢磨して自分を高めることができます。
修士課程では高額な学費を負担しなくてはいけない
一流の大学は最新鋭の設備と一流の講師陣で成り立っています。
そのため研究環境としては最高ですが、その分学費が非常に高くなります。
修士課程では公立大学で学費が一年でおよそ300〜400万円、私立大学では学費が一年でおよそ400~600万円かかります。
また修士課程では奨学金がほとんどないため、修士課程に進学すると非常に高額な学費を負担しなくてはいけません。
博士課程は生活費まで負担してくれることが多い
一方、博士課程に進学すると大学や研究室から研究員として雇われるため、学費と生活費は大学側が負担してくれます。
RA,TAなどを行うことで生活費が支給されるので、これらを研究の合間などに行う必要があり大変です。
しかし努力をすれば、お金の心配をする必要がないことは大きな利点です。
アメリカの大学院のPh.Dは超難関
一般的にアメリカの大学院のPh.Dは超難関です。世界中の優秀な学生がアメリカに留学しようとしていて、競争はとても厳しいものになっています。
Stanford大学のホームページには、各学部は毎年300人以上の応募がある中から30人ほどしか合格させていないようでとても厳しいようです。
また一部の大学ではMaster課程もあるので、そちらから学生を積極的にとっているようなので、外部生にとってはもっと厳しい競争になるでしょう。
難関大学院のPh.Dでは研究成果を作ることが大切
多くのブログで書かれていますが、 Ph.Dとして留学するには研究成果を作ることが大切です。
研究成果が何よりも重要な要因になってくるので、一生懸命論文を執筆したりと実績を少しずつ作り上げていきましょう。
僕が大学生だったときにアメリカの大学院へ進学した先輩が複数人いましたが、日本の奨学金をもらって修士課程に進学している方と日本で修士課程を終えて、アメリカの大学院で博士課程に進学された方が多かったように感じます。
アメリカの大学院でPh.Dを取ろうと考えるのであれば、日本の修士課程で実績を積むのが現実的な道のように感じています。
高いTOEFLの点数とGRE受験が必要
アメリカの多くの大学ではTOEFL90点から100点以上(場合によってはSpeakingで20点以上のようなセクションごとの最低点もあります)が求められることが多いです。
僕はTOEFLに苦労した学生の一人ですが、TOEFLで100点を取るのは本当に難しいです。僕はTOEFLを4回受験して最高90点しか取れませんでした。
TOEFL90点しか取れなかった僕でも、スイスの留学先では英語にあまり困らないレベルの英語力がありましたので、100点がいかに難しいかわかってもらえるでしょうか。
そのうえ、多くのアメリカの大学院ではGREというアメリカのセンター試験のような試験が課されています。
TOEFLでの高得点に加え、GREの勉強を並行して行わないといけないことからアメリカの大学院の入学条件を満たすのはすごく難しいです。
アメリカの大学の情報
アメリカの大学院留学を考えている方にとって一番欲しいものは大学の情報です。
各大学のTOEFLスコア・強い専門分野・費用・合格率など日本では手に入らない情報をこちらの本ではまとめて記載されているので、志望校を決める際に参考にすることができます。
アメリカの大学院留学を考えているのであれば、常においておきたい本です。
理系学生は特に専門分野に注意する
理系の学生にとって重要なのは、自分の専門分野がどの程度優れているのかという点です。
世界大学ランキングからではわからない各大学の専門分野の強さについてもこちらの本では紹介されています。
いくら世界ランキングが高い大学でも自分が行きたい学科がそれほど有名でない場合、後悔することもあります。
自分の興味がある分野について強い大学を選ぶことで、留学後も後悔なく一流の環境で勉強することができます。
理系学生にとっては何よりも研究内容が重要です。各大学の強い専門分野は注意深く確認しましょう。
アメリカの分野別のランキング
アメリカの大学院については、こちらから分野で別のランキングを確認することができます。
こちらでは各分野の順位とともにその分野に対応している学科も紹介しているので、参考にしてください。
アメリカの大学についてはこちらのUSNEWSが一番詳しく説明されていますし、情報がたくさんあるのでアメリカの大学を考えている人は必ず見るようにしましょう。
イギリス留学
イギリスにも多くの有名な大学があり、留学先としてとても人気です。
特に経済やビジネスといった分野で強い印象があり、これらの分野を勉強するためにイギリスへ留学する人が多いようです。
ここではイギリス大学院留学を決意する前に知っておきたいイギリス留学の特徴をまとめておきます。
イギリスの大学院は、修士課程は 1 年で修了するものが多いのが大きな特徴です。
そのためアメリカのように長期休暇がなく、厳しいコースワークが課されます。
イギリスの大きな特徴は高額な学費と短い留学期間です。
高額な学費
アメリカの大学院ほどではありませんが、イギリスの大学院の学費も非常に高価です。
例えばOxford大学では一年間の学費がおよそ20,000ポンドでおよそ300万円くらいかかります。
それに生活費や滞在費、航空券代などがかかるので留学費用は非常に高くなります。
イギリスに進学する際には高額な学費や高い物価などによって留学費用が多くかかることを認識しておきましょう。
またアメリカに比べて奨学金が少ないので、学費などを自己負担しなくてはいけない可能性が高いです。
しかし、進学から1 年で修士号を取得できるため、生活費などはアメリカに比べて抑えることができます。
二つの修士課程のコース
修士コースは「Taught Masters(講義主体のコース)」、「Research Masters(研究主体のコース)」の 2 種類に分かれています。
Taught Mastersは講義を中心に卒業に必要な単位を取得することで、学位を取ることができます。
一方、Research Mastersの場合、日本と同じように研究を行いMaster Thesisを書き、受理されることで学位を受け取ることができます。
短い留学期間
アメリカとは違い、イギリスの大学院には1年で修了するコースも数多く用意されています。
留学期間が短くなることで、高額な学費や高い生活費を抑えることができ、結果的に留学費用は安くなります。
しかし、修士課程の時間が短いためアメリカのように長期休暇にインターンシップに行くなどの時間はなく、授業や研究に集中して卒業まで一気に進めていきます。
高いTOEFLスコアが必要
イギリスの大学院はアメリカの大学院に比べて必要になるTOEFLのスコアが高くなります。
イギリスの一流の大学院ではTOEFL100点以上のスコアを要求される上に、各セクションの最低点数も設けられています。
そのため、英語が苦手な人にとってはとても厳しい入学条件になります。
ケンブリッジ大学のTOEFLスコアは?
ケンブリッジ大学のTOEFLのスコアは学部によっても異なりますが、おおよそ100点です。
例えば、ケンブリッジの工学部の入学条件はR25,L25,S25,W25の合計100点を取らなくてはいけません。
アメリカの大学では90点でも留学することができるのに、イギリスでは最低点が100点で一部の学部では110点も要求されています。
日本人の一般的な「リーディングで高得点を取って、スピーキングの点数を補う」という作戦が通じません。
イギリスの大学院に留学するなら、TOEFLの勉強をバランスよく勉強しましょう。
イギリスの大学院はGREは不要
イギリスの大学院では高いTOEFLの入学条件の代わりにGREが必要になる場合は稀です。
GREの勉強をする時間をTOEFLの勉強に費やすことができるので、GREは捨ててTOEFL対策をしていきましょう。
経済系の学部ではGMAT/GREが必要になることもあるので、経済系の学部をイギリスで受ける際には注意してください。
入学の締め切りは遅い
アメリカの大学院の締め切りは12月がほとんどですが、イギリスの大学院の締め切りは遅く3~5月に設定されているようです。
そのためアメリカの大学院に出願して、その合否を確認してからもイギリスの大学院に出願することができます。
また締め切りが遅いので、英語の試験の成績を上げるチャンスもあるので、最後まで諦めずに勉強を続けていけば合格する可能性を上げることができます。
イギリスの有名な大学
イギリスには、オックスフォード大学やケンブリッジ大学のような有名大学が多数あります。
まずはイギリスにどのような有名大学があるのかを確認していきましょう。
大学の評価を調べるときに活用するのは、やはり世界大学ランキングです。
こちらに有名で信ぴょう性のある大学院ランキングとランキング結果を載せておきます。
3つの有名な世界大学ランキング
参照したのは以下の3つです。
- Times Higher Education World University Rankings
- QS World University Rankings
- Academic Ranking of World Universities
イギリス大学院の順位表
大学名 | THE | QS | ARWU | Total |
University of Cambridge | 4 | 4 | 4 | 12 |
University of Oxford | 1 | 6 | 7 | 14 |
Imperial Collage London | 8 | 9 | 22 | 39 |
University College London | 15 | 7 | 17 | 39 |
University of Edinburgh | 27 | 19 | 41 | 87 |
King’s Collage London | 36 | 21 | 50 | 107 |
University of Manchester | 55 | 29 | 35 | 119 |
London School of Economics and Political Science | 25 | 37 | 圏外 | 162 |
University of Bristol | 71 | 41 | 57 | 169 |
University of Glasgow | 88 | 63 | 圏外 | 251 |
こちらで紹介したように、多くの大学が100位以内にランキングしています。
このことからもイギリスの教育レベルの高さがわかります。レベルの高い留学をしたいならばイギリス留学は最適です。
ヨーロッパ留学
ヨーロッパの大学院は、授業料が非常に安いのが特徴です。
ヨーロッパの大学院の授業料は日本よりもはるかに安く、そのため留学費用を抑えることができます。
留学期間は進学してから2年間で、日本と同じ期間勉強をすることができます。
日本の奨学金は非常に競争力が厳しく取るのが大変ですが、ヨーロッパ留学だったら、奨学金がなくても十分に留学することができます。
ヨーロッパ留学の大きなメリット
ヨーロッパ留学の大きなメリットは以下の3点です。
- 学費が安い
- 様々な国の学生がいる
- 英語ネイティブではない学生が多い
これらのメリットについて詳しく説明していきます。
ヨーロッパ留学は学費が安い
アメリカの大学院では学費だけで年間300万円以上かかることも珍しくありません。そこに寮費や生活費などが加わると年間500万円以上はかかるでしょう。
博士課程での進学であれば、大学の奨学金などを利用して、生活費を稼ぎながら勉強することができますが、修士課程で奨学金をもらえることは稀です。
しかし、ヨーロッパの大学院であれば、ほとんどの大学院の学費は非常に安いものになっております。
そのため、アメリカに留学する場合に比べて留学費用を大幅に抑えることができます。
こちらの記事にもあるように、多くの国では学費を非常に安く抑えているようなので、留学費用で悩んでいる方には是非ヨーロッパ留学を考えてみてください。
http://tatsumarutimes.com/archives/5574
留学費用は「学費」+「生活費」
アメリカの大学院とは違い、ヨーロッパの大学院の学費は一般的に安いです。
僕が実際に留学したスイスのEPFLの一年間の学費は1600CHFほどで、日本円に換算すると年間20万円ほどでした。
物価は日本とそれほど変わらない国が多いですが、僕が留学したスイスのように物価の高い国では生活費が膨らんでしまいます。
学費が安くても物価が高くては留学費用は増えてしまいますので、「留学費用を安く抑えたい」という方は学費と共に志望校の国の物価も合わせて確認しておきましょう。
アメリカの大学院では莫大な学費がかかることを考えると、ヨーロッパ留学を選択することで留学費用をかなり安くすることができます。
留学期間は日本と同じ2年間、イギリスでは1年間
ヨーロッパの大学院の修士課程は一般的に2年間なので、日本と同じ期間勉強をします。
そのため滞在費用についても、日本にいる一人暮らしにかかる費用とそれほど変わらないことが多いです。
イギリスであれば、物価は少し高いものの修士課程を1年間で終えることができるものも多いので、留学先での生活費を半分にすることができます。
留学費用に悩んでいる方は、ヨーロッパ留学をすることで留学費用を抑えることができます。
ヨーロッパの様々な国の学生と交流できる
スイスに留学して一番良かった点は、ヨーロッパの様々な国の人と交流できたことです。
アメリカでも様々な国の人との交流はあると思いますが、ヨーロッパ留学をするとヨーロッパの国出身(フランス・イタリア・ドイツ・ベルギーなど)と多く交流を持つことができます。
ヨーロッパの中でも文化は異なっており、それぞれの文化の違いなど多くのことをコミュニケーションを通して学ぶことができました。
僕が留学したスイスのEPFLは非常に国際的な大学で、半分近くの学生はスイス以外の国から留学してきています。
留学生間での交流は大学院留学の大きな財産になるので、ぜひ留学した際にはいろいろな国の方と交流をしてみてください。
英語で授業を受けることができる
ヨーロッパ留学で一番不安な点は、言語の問題だと思います。
フランスではフランス語、ドイツではドイツ語が話されていて、それらの言語を覚えなくても留学できるのか不安に感じる人も多いでしょう。
結論から言うと、言語はできなくても全く問題ないです。
僕はフランス語圏に留学していましたが、フランス語はほとんど話すことができません。
英語の授業がほとんど
ヨーロッパの大学院では、ほとんどの授業が英語で行われています。
そのためフランス語やドイツ語が全く話せなくても授業を理解することはできます。
全ての教員が流暢に英語を話すことができるため、授業内容について質問があるときでも全て英語で話し合うことができますし、学生生活において全く問題はありません。
ほとんどの人が英語は第二言語
アメリカやイギリスと異なり、ヨーロッパの人の多くが日本と同様、英語を第二言語として扱っています。
そのためネイティブのように、早口な英語で何を言っているのか全くわからないと言うことはなく、お互いにわかりやすい英語を使うように心がけています。
英語が苦手な僕にとっては、とてもありがたく、ディスカッションにおいても初めからある程度発言をすることができました。
アメリカに留学した人の話では、ディスカッションで苦労したとよく聞くので、その点ヨーロッパ留学では英語で悩むことはそれほどありません。
学部では留学先の言語が必須
大学院では英語でほとんどの授業が行われますが、学部(undergraduate)では現地の言葉が使われることが多いです。
EPFLでも学部生の授業はほとんどフランス語なので、フランス語力が必要です。
英語以外の言語が話せない方は、大学院からヨーロッパに留学するようにしてください。
5. 最後に
大まかではありますが、各国の大学院の特徴や学費・留学期間をまとめてみました。
それぞれの国の大学院の制度・学費・留学期間は大きく異なるので、実際に希望する大学の制度については自分で再度調べてください。
留学先国別の制度・学費・期間についてはこちらの本に詳しく書いてありましたので、こちらの本も合わせて読んでみてください。